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アップルとインテルがソフトバンクGのフォートレス特許活動を競争法違反で提訴
こんにちは。
企業内弁理士のタクパパです。
CNBCが「アップル(Apple)とインテル(Intel)、ソフトバンクG企業(フォートレス(Fortress))の特許活動を反トラスト法違反で提訴」と報じましたね。
Apple, Intel file antitrust case against SoftBank-backed firm over patent practices
今回はこのフォートレス(Fortress)とはどんな企業なのか、また反トラスト法とはどんな法律で、アップルとインテルはどのような理由でフォートレスを提訴したのか、できるだけ簡単に説明したいと思います。
ソフトバンクG企業のフォートレスとはどんな企業?
ソフトバンクG企業のフォートレスは要するに投資会社なのですね。
ソフトバンクが2017年12月にフォートレスを買収することを発表していました。
このソフトバンクの発表によれば、フォートレスは「2017年9月30日時点で361億米ドル(約4兆793億円※)の運用資産を持つ、多角的にグローバル投資を行う世界的な投資ファーム」ということなので、グローバルに投資を行う大企業なのですね。
そして、このフォートレスは特許への投資も盛んに行っている企業でして、この特許の世界ではNPE(Non-Practicing Entity)と呼ばれるジャンルの企業に属しています。
つまり、NPE(Non-Practicing Entity)は特許は保有しているけど、その特許発明の事業は行わない企業ということですね。
ソフトバンクG企業のフォートレスはパテントトロール(NPE(Non-Practicing Entity))?
NPE(Non-Practicing Entity)は、昔はパテントトロール(特許の怪物)とも呼ばれたりしていました。
パテントトロール(特許の怪物)と呼ばれるくらいなので、NPE(Non-Practicing Entity)はあまり世の中にとって良い活動をしている企業とは思われていないということですね。
ではフォートレスが一体何をしているのかというと、PE(Practicing Entity=事業を行う企業)から特許を購入して、その特許を活用してお金を稼いでいるわけですね。
Allied Security Trust(AST)という特許保有企業の会員からなる団体でパテントトロールなどのNPE(Non-Practicing Entity)が仕掛ける特許侵害訴訟から会員企業を防衛する団体が特許を売却する企業や購入する企業に関する記事を公表しました。
このASTの記事によれば、2018年第2四半期(7月―9月)で、特許を購入した企業(buyer)のうちフォートレスはInterDigital社についで2位となっています。
InterDigital社も有名なNPE(Non-Practicing Entity)で2016年頃にノキアやマイクロソフトに対し特許侵害訴訟を提起しており、逆にマイクロソフトから反トラスト法違反で反訴されていました。
それで上記のASTの記事によれば、フォートレスはUnilocというこれまたNPE(Non-Practicing Entity)から通信関係(Comm)の特許を626件も購入しています。
この626件がどのような特許なのかは分かりませんが、UnilocがNPE(Non-Practicing Entity)ということは、おそらくこの626件もUnilocがどこかの企業から購入したものなのでしょう。
アップル、インテルとソフトバンクG(フォートレス)訴訟概要
上記したCNBCの記事によれば、まずフォートレス関連企業がアップルに対し、少なくとも25件の特許侵害訴訟を提起したということです。
そして、フォートレスの関連企業はそれぞれの特許侵害訴訟で、26憶ドル(約2800億円)~51憶ドル(約5500億円)もの損害賠償金をアップルに請求しているとのことです。
この特許侵害訴訟では、「アップルのヘルス追跡アプリが歩数計の特許を侵害している」と訴えられているようです。
そして、フォートレス関連企業は「フォートレス関連企業は、アップル製品1台当たり$1.41~$2.75の損害賠償額をもらえると考えており、トータルの損害賠償額は3憶7500万ドル(約4000億円)~7憶3200万ドル(約7900億円)だと信じている。」と主張しています。
フォートレス関連企業は事業をしていないのに約7900億円もの損害賠償金を請求するってどう思いますか?
たしかに特許は保有しているかもしれませんが、いくらなんでもおかしいでしょって感じがしてしまいますよね。
そして、このフォートレス関連企業のアップルへの特許侵害訴訟に対し、アップルは反トラスト法違反でフォートレスを提訴したということですね。
なお、インテルは別途、反トラスト法違反でフォートレスを提訴していたようなのですが、この訴訟は取り下げて、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所にアップルと共同で反トラスト法違反でフォートレスを提訴したものです。
反トラスト法(Anti-Trust Law)とは?何をすると違反になるのか?
反トラスト法(Anti-Trust Law)は競争法ともいわれ、日本では独占禁止法に相当するものです。
簡単にいえば、反トラスト法は自由競争を担保するとともに独占資本の活動を規制するものといえます。
ただ、何をすると反トラスト法に違反するのかというのは、難しいところがあるのですが、過去の有名な裁判として、半導体大手クアルコムがスマートフォン向け半導体市場で反トラスト法に違反したと米カリフォルニア州地方裁判所に判断されたことがありました。
これはクアルコムはスマートフォン向け半導体市場の基本特許を多数保有しており、これでスマートフォンメーカーに対し、過剰なライセンス料を課していたということで、自由競争を阻害したということなんだと思います。
ちなみにクアルコムは世界中でアップルから競争法違反で訴えられており、韓国や中国や台湾でクアルコムに制裁金が課されております。
そして2018年1月に欧州でクアルコムに対し、なんと9億9700万ユーロ(約1350億円)の制裁金を科したとの欧州委員会が発表しており、あまりにも金額が大きかったので、結構な衝撃が走っていましたね。
なお、クアルコムは立派な半導体メーカーなので、NPE(Non-Practicing Entity)ではなく立派なPE(Practicing Entity)です。
そんなクアルコムでさえ、過剰なライセンス料を課したということで競争法違反(反トラスト法違反)となってしまうということです。
だとすると、バリバリのNPEであるフォートレスが約7900億円もの過剰とも思える損害賠償金を請求したら、余裕で競争法違反(反トラスト法違反)となってもおかしくないような気がしてしまいますが、どうなんでしょうね。
アップル、インテルとフォートレス反トラスト法訴訟のソフトバンクへの影響
クアルコムが世界中で制裁金を受けまくっていたときは株価は暴落していたようです。
2017年当時で「株価は年初から17%の下落」とニュースになっていました。
ただ、2019年4月ですが、アップルとの訴訟和解を発表したことで、クアルコムの株価が23%も一気に急上昇しており、長い目で見れば、結局、クアルコムの株価は上がっているようですね。
なので今回のアップル、インテルとフォートレスとの反トラスト法違反による訴訟についても一時は、フォートレスの株価が下がることがあるのかもしれませんが、長い目で見ると、どこかで和解をして落ち着くような気もします。
ただクアルコムとフォートレスとで決定的に違うのはクアルコムがPE(Practicing Entity)であって、なんならアメリカを代表する半導体メーカーであるのに対し、フォートレスはNPE(Non-Practicing Entity)であって、経済にとって良い影響を与える存在ではないという世論があることですかね。
これがどう影響するか、今後の裁判経緯を継続してウォッチしたいと思います。
なお、仮に今回の裁判でフォートレスに対して莫大な制裁金が課されたりしますと、ソフトバンクへの業績、あるいは株価の影響は避けられないのかなと考えます。
そもそもフォートレスのようなNPE(Non-Practicing Entity)を買収して金儲けをしようとしたソフトバンクの買収なのですが、得策だったのですかね。
もともとフォートレスがパテントトロールということが知られていたのか分かりませんが、そんな企業を買収したらソフトバンクの企業イメージが悪くなってしまいそうですし、今回のようなリスクも大きいし、あまり良い買い物ではないのかなと思いました。
本記事のまとめ
以上、ソフトバンクが買収したフォートレスがどのような企業であるのか、またパテントトロール(NPE(Non-Practicing Entity))であるのか、さらにアップル、インテルからの反トラスト法違反による裁判について説明しました。
個人的にはパテントトロール(NPE(Non-Practicing Entity))は経済にとって全く良い影響を与えるものではないと考えています。
むしろまじめに事業を展開しているPE(Practicing Entity)から、たかっている良くない存在であると考えてまして、ここらでお灸をすえる(※フォートレスに厳しい制裁金を与える)方がアメリカの経済のためになると思ってしまいますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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