知財部の仕事内容「期限管理:特許出願~拒絶査定」を説明します(実は超重要)

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知財部の仕事内容「期限管理:特許出願~拒絶査定」を説明します(実は超重要)

 こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。

 知財部にとって一番、重要な仕事ってなんでしょうか?

 実はそれがこの期限管理なんです(だと僕は思います)。

 知財の中でも特に特許の手続は様々な局面で期限が設定されるため、その期限管理がとても重要となります。

 なんといってもその期限を過ぎてしまえば、特許を取得することができなくなったり、あるいは特許が成立していても、特許を失ってしまうかもしれないからです。

 期限管理なんて簡単な仕事だと思うかもしれませんが、これが意外に複雑で難しいんです。

 1件、2件の特許だけであれば、大したことはないのかもしれませんが、大企業のように数百件とか数千件も特許出願をする場合、特に日本以外の外国へ特許出願をすると、それぞれの国で法律が異なりますので、当然、それぞれの手続の期限も変わるということですね。

 というわけで、今回は知財部の仕事内容として期限管理について説明します。

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特許事務部門(または特許事務所)が行う期限管理(特許出願~拒絶査定)とは?

 期限管理は知財部の特許事務部門が責任をもって行うことが多いと思いますし、あるいは社外の特許事務所に任せてしまう企業もあるかと思います。

 実はこの特許の期限管理の仕事を専門で行う企業も存在します。

 ここでは日本の特許庁に特許出願をした場合で特許出願~拒絶査定までのみの話をしたいと思います。

特許出願前の期限管理とは?

特許出願前の期限管理

 特許出願をする前は特許庁が設定する期限はないのですが、その特許出願をする企業の事情により期限が生じる場合があります。

 たとえば、2019年11月6日現在、ある企業(※仮に株式会社シャーポとします)の開発部でスマートフォンを開発しているとして、その開発部の発明者がスマートフォンの操作方法の発明を考えて特許を出願したいとしましょう。

 ここで、その株式会社シャーポがその開発中のスマートフォンを2020年2月1日に販売を開始する予定であるとします。

 そうすると、2020年2月1日になってスマートフォンが販売されてしまったら、↑のスマートフォンの操作方法の発明は世の中に知れわたってしまうので、株式会社シャーポは特許を取得することができないことになってしまいます。

 特許取得の条件には発明の新規性(要は新しいことです)が求められており、この条件を満たさなくなってしまうということですね。

 ですので、上記の例でいえば2020年2月1日に販売開始なので、その前日の2020年1月31日が出願期限となります。

 こういった外部へ公表する予定のある発明の場合、いつまでに出願しないといけないのか、その出願期限を管理しないと特許を取得できないことになるため非常に重要となるわけですね。

特許出願前の期限管理をしなかった場合の問題

 実際の特許庁の審査では、特許庁の審査官という方がいまして、特許出願の審査をすることになります。

 ただこの審査官は特許や論文などの文献を中心に調査するのが通常であり、上記した発明が採用されたスマートフォンの販売情報などを調査することは難しく、行うことができない場合があります。

 なので、上記の例でいえば、仮に2020年2月1日にスマートフォンを販売開始した後で、そのスマートフォンに搭載されている操作方法の発明(※つまりスマートフォン販売により新規性を失っている発明)を特許出願したとしても特許になる可能性は実はあります。

 ただこういう本来は新規性を有さないので特許になるはずではなかった特許のことを無効理由を有する特許といいまして、簡単にいえばあとから消滅してしまう可能性のある特許ということですね。

 ですのでこういった無効理由を有することのない傷の無い特許を取得するために特許出願前の期限管理が極めて重要ということがわかりますよね。

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特許出願後から拒絶査定になるまでの期限管理とは?

出願審査請求の期限管理(出願審査請求とは?)

 出願審査請求というのは文字通り、その特許出願が特許になるかどうか審査してくださいと特許庁にお願いする手続のことですね。

 この出願審査請求の手続を行わないと、いつまでたっても特許出願の審査が始まらないので、特許を取得することはできません。

 また出願審査請求の期限は特許出願の日から3年以内と決まっています。

 上記した例の株式会社シャーポがスマートフォンの操作方法の発明を、たとえばスマートフォン販売前の2020年1月31日に無事に特許庁へ特許出願を完了したとしましょう。

 そうするとその特許出願について出願審査請求の期限は2023年1月31日となります。

 なお、仮にこの出願審査請求の手続を忘れてしまい、2023年2月1日になったとしたら、どうなるでしょうか?

 なんと株式会社シャーポの特許出願は取り下げられたものとみなされてしまい、もはや特許の取得はできません

 仮に上記したスマートフォンの操作方法の発明が株式会社シャーポの社運を賭けて開発したものだったら、どうでしょうか?

  出願審査請求の期限管理をしくじった知財部の担当者は責任を取りようがないくらいまずいですよね。。。

 それだけ出願審査請求の期限管理は重要だということですね。

特許庁からの拒絶理由通知があったときの期限管理(拒絶理由通知とは?)

 さて、上記の特許出願に対し株式会社シャーポの知財部は出願審査請求の手続を2022年2月1日に行ったとしましょう。

 その後、特許庁の審査官による特許出願の審査が始まります。

 この審査官がその特許出願が特許になるための条件を満たしていると判断すれば、その特許出願に対してめでたく特許査定の連絡があります。

 一方で、審査官がその特許出願が特許になるための条件を満たしていないと判断すれば、その特許出願に対して拒絶理由通知の連絡があります。

 特許庁によれば8割以上の特許出願に対し、特許査定ではなく、拒絶理由通知があるそうです。

 この拒絶理由通知に対して出願人(※上記の例では株式会社シャーポ)は60日以内に何らかの応答をしないといけません。

 たとえば審査官に対し「いやいや、あなたの指摘は間違いで私の特許出願は特許になるはずだ」といった趣旨の「意見書」を提出するとかですね。

 あとは特許出願の書類の中で「特許請求の範囲」と呼ばれる書類が基本的には審査官の審査の対象になるのですが、拒絶理由通知で、この「特許請求の範囲」の内容に新規性がないと審査官に指摘されているのであれば、この「特許請求の範囲」を補正する「手続補正書」と呼ばれる書類を提出するとかが考えられます。

 株式会社シャーポの特許出願に対し、仮に2023年11月7日にこの拒絶理由通知の連絡があったとすると、2024年1月6日までに応答しないといけないわけですね。

 この拒絶理由通知に応答せずに2024年1月6日を過ぎてしまえば、その特許出願に対し拒絶査定が通知されてしまいます。

 なので、知財部としてはその特許出願で特許を取得したいのであれば、2024年1月6日までに確実に「意見書」や「手続補正書」を提出できるように期限管理しないといけないわけですね。

特許庁からの拒絶査定の通知があったとき(拒絶査定とは?)

 拒絶理由通知に2023年12月28日に応答したものの審査官が上記の「意見書」や「手続補正書」を見ても、やはり特許にするための条件を満たしていないと判断して、その特許出願に対し2024年5月15日に拒絶査定を通知したとしましょう。

 拒絶査定とは上記したとおりで、特許庁の審査官がその特許出願を拒絶した、つまりは「特許にしませんよ」という意思表示をしたということですね。

 これはあきらめるしかないと思いきや、この拒絶査定に対して、「ちょっと待った!」ということで、まだ不服を申し立てる手続を行うことができます。

 この手続のことを拒絶査定不服審判といいまして、誰が審理するのかというと審査官に代わって特許庁の審判官という偉い方が審理します。

 この拒絶査定不服審判は簡単にいえば「拒絶査定を通知した審査官の判断はおかしいからちゃんと審査してください」と審判官にお願いするようなものなんですね。

 そして、拒絶査定不服審判は拒絶査定の通知から3か月以内に請求する必要があります。

 なので上記の例では2024年5月15日が拒絶査定の通知日なので、2024年8月15日までに拒絶査定不服審判を請求する必要があり、これを過ぎてしまうと、拒絶査定が確定し、特許を取得することはできないことになります。

 ですので、絶対に特許を取得したい特許出願の場合、この期限管理も非常に重要になるわけです。

本記事のまとめ

 以上、特許事務部門(または特許事務所)が行う期限管理として、「特許出願前の期限管理」、「特許出願後から拒絶査定になるまでの期限管理」について説明しました。

 どこの期限管理をおろそかにしても特許を取得することができなくなるため、いずれの期限管理も重要であることが理解いただければ嬉しいです。

 これ以降はまた別の記事で書こうと思いますね。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

コメント

  1. […] […]

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