企業知財部とは?仕事内容(発明発掘)をLINEの既読機能を例に説明します

企業知財部
出典:LINE Corporation
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企業知財部とは?仕事内容(発明発掘)をLINEの既読機能を例に説明します

 

 こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。

 知財部って聞いたことあるでしょうか。

 正式名称は知的財産部だと思いますが、知的財産センターだったり、中小企業であれば部ではなくて知財課とか、または特許部とかって言ったりするところもあるかと思います。

 あるいはどの企業にも法務部があると思いますので、法務部の一つの部署やグループとして知財部があるところも結構、多いようです。

 いずれにしても企業内では1、2を争う超マイナー部署だと思います 笑

 というかちゃんとした統計はないですが、知財部に相当する部署が社内にある企業は、世の中の企業の1%どころか0.1%もないのではないかと思います。

 そんな超マイナー部署の知財部について、10年以上、大手企業の知財部で働いている僕が説明しますね。

知財部の企業内での位置づけ

 企業は、営業を中心として収益をあげるビジネス部門、商品やサービスを開発し、生産するまたは生み出す開発部門(開発部、品質保証部、生産技術部など)、そして、事務系の業務を行う法務、人事といったコーポレート部門(事務系部門)にざくっと分けられると思います。

 そして僕の会社もそうですが多くの企業において知財部はコーポレート部門(事務系部門)に属しています

 ここで法務部は、部品を購入する際の売買契約や共同開発を行う際の秘密保持契約、あるいはある業務を社外の専門企業や専門家に依頼する際の業務委託契約などについて契約書を作成したりチェックしたりするのが主な業務ですよね。

 業種にはよりますが、たとえば僕の会社のような製造業の場合、日々の業務において様々な関係者と契約を結ぶ必要があるので、そのたびに法務部の力が必要となるわけです。

 そのため、法務部は企業内のほとんどの人間が一度はお世話になったことのある有名な部署というわけですね。

 ところが知財部はどうでしょうか。

 知財部の主な仕事は特許に関する業務です。

 特許に関連する部署は、上記したビジネス部門、開発部門、コーポレート部門(事務系部門)の中では開発部門だけなので、その他のビジネス部門やコーポレート部門(事務系部門)は知財部のことなど(もしかするとその存在すら)知らない方が大半だと思います。

 また、開発部門といっても通常、品質保証部や生産技術部はあまり特許を出したりしないので、これらの部署も知財部を知らない方が多いようですね。

 さらに開発部門の開発部とはいっても、みんながみんな特許を出すわけではないです。

 僕の会社は知財業界の中では知財部が有名な方だと思いますが、それでも開発部の2~3割が知財部のことを知っているくらいではないかなと思いますね。

 というわけで会社全体で考えると、知財部は全社員のうちの1割も知らないくらいの超マイナー部署だと言っていいようです。。

知財部の仕事内容(発明(特許のタネ)の発掘)

 知財部の仕事は発明の発掘から、明細書の作成、拒絶対応などの権利化フェーズと、特許権の取得後の活用フェーズとに大きく分かれると思います。

 ここでは知財部の仕事のベースとなる発明の発掘(特許のタネ)について説明しますね。

発明(特許のタネ)の発掘とは?

 発明の発掘とはなんのことでしょうか?

 初めて聞く方はなんのこっちゃ分からないですよね笑。

 日ごろ、製品を開発する開発部の人たちでさえ、何が発明なのか、どんな発明が特許になるのか、よく理解していない方が実は多いです。

 まあそれは当たり前の話でして、特許になるための条件について詳細に勉強されるエンジニアなんて普通はいないですよね。

 ただエンジニアとして開発をしている以上は必ず発明をしているはずで、実はその発明の中にはお宝となるものが眠っている可能性があるわけです。

 よくある話がエンジニア本人が「いやいや、私のこんなしょぼい開発内容なんて特許にならないですよ」とか言っていた内容が実はすごい発明で、しかも後々、ライバル企業の製品で同じ発明が使われていることが分かり、後からすごい後悔をすることがあったりします。

 こういうことが無いようにエンジニアの開発状況の情報収集を行い、どの開発内容が価値ある発明であるのか厳選し、さらにこの発明の内容を磨き上げるのが発明(特許のタネ)の発掘というわけで知財部の大事な仕事というわけです。

 特に日本人のエンジニアは謙虚で控えめな人がとても多いため、黙っていたら何も出てこないので、知財部が議論をリードしながらエンジニアの頭の中のお宝を引っ張り出さないといけません。

 つまり、特許の価値(企業の知的財産)を高いものにできるかどうかは知財部次第といっていいでしょうね。

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発明(特許のタネ)の発掘の重要性(LINE既読機能を例に説明)

 たとえばの話ですが、LINEというトークアプリがありますよね。

 あのLINEに有名な既読機能ってあるじゃないですか。

 LINEというアプリができたのが、あの東日本大震災がきっかけで2011年6月だそうです。

 僕が調べたところでは、LINE株式会社はその頃に特許出願をしていないので、あの既読機能そのものにはおそらく特許を取得していないと思います(※間違っていたらすいません)。

 でもその後にできたトークアプリは色々とありますが、既読とは表示されなくても同じようにメッセージを受け取った相手が読んだかどうか分かる仕組みがありますよね。

 なので仮にLINE株式会社が既読機能の特許を保有していたら、ライバル企業のアプリ(カカオトークやメッセンジャーとか)ではその既読機能を使えなかったはずなんですね。

 そんな既読機能なんて特許になるのか?と思うかもしれませんが、2011年6月に世の中に知られている技術にどんなものがあったかにはよりますが、僕個人の意見としては既読機能が特許になる可能性は十分あったと思いますね。

 既読機能って、とても便利ですし、そもそもLINEは被災した家族の安否を確かめることができるように、メッセージを送った相手が読んだかどうかが分かるためのアプリというのが基本的なコンセプトだったと思います。

 既にLINEはトークアプリの市場で国内で圧倒的なシェアを誇っているので、あまり問題はないのかもしれませんが、仮に既読機能の特許をLINE株式会社に取られていたら、カカオトークやメッセンジャーを開発しているライバル企業はとても困ったはずです。

 既読機能の特許を取得していれば(別の言い方をすると発明の発掘をちゃんとやっていれば)、もしかするとLINE株式会社はライバル企業から特許許諾料を受け取る、あるいはライバル企業のアプリで既読機能が使えないことでさらにLINEのシェアがアップする、なんていうことが起こり得たかもしれませんね。

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 以上はあくまでも仮の話ですが、以上の通り、発明の発掘というのは知財部にとって、とても大事なお仕事というお話でした。

ベンチャー企業、スタートアップ企業の発明の発掘

 ちなみにLINEが生まれた2011年6月当時、LINE株式会社は世の中に存在しておらず、一ベンチャー企業であったかと思います。

 一ベンチャー企業であれば、おそらく知財部なんてなかったでしょうし、LINEの開発者が「既読機能で特許を取ろう」と考えるのは、よほど特許のセンスの良い方でないと難しかったのではないかなと思います。

 LINE株式会社が特許を出し始めたのは2014年頃からのようですし、今でこそ知財部がちゃんとあるようですが、こういったベンチャー企業、スタートアップ企業の発明(特許のタネ)の発掘は社内に知財専門家がいないために、なかなか難しいところがありますよね。

 なので、社外の弁理士がこういったベンチャー企業、スタートアップ企業の場合には社外知財部のような位置づけで、お宝となる発明を発掘するところまでサポートすることが大事だと思います。

 仮に僕が弁理士として独立した際には、ベンチャー企業、スタートアップ企業の内部に可能な限り入り込み情報を吸い上げたうえで、お宝発明をちゃんと発掘し特許にすることでその企業の事業に貢献できたらいいなと思ったりします。

この記事のまとめ

企業の知財部ってどんな部署?仕事内容は?

1知財部の企業内での位置づけ

 会社全体で考えると、知財部は全社員のうちの1割も知らないくらいの超マイナー部署だと言っていい。

2知財部の仕事内容(発明(特許のタネ)の発掘)

 2-1発明(特許のタネ)の発掘とは?

 エンジニアの開発状況の情報収集を行い、どの開発内容が価値ある発明であるのか厳選し、さらにこの発明の内容を磨き上げること

 2-2発明(特許のタネ)の発掘の重要性(LINE既読機能を例に説明)

 発明の発掘をちゃんとやっていれば、もしかするとLINE株式会社はライバル企業から既読機能の特許許諾料を受け取る、あるいはライバル企業のアプリで既読機能が使えないことでさらにLINEのシェアがアップする、ということが起こり得た。

 2-3ベンチャー企業、スタートアップ企業の発明(特許のタネ)の発掘

 社外の弁理士がベンチャー企業、スタートアップ企業の場合には社外知財部のような位置づけで、お宝となる発明を発掘するところまでサポートすることが大事。

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  1. […] […]

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