特許って儲かるの?主婦のアイデア(発明)の例で説明します。

知財戦略
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特許って儲かるの?主婦のアイデア(発明)の例で説明します。

 こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。

 知財の専門ではない皆さんは特許と聞いてどんなイメージを持たれるでしょうか。

 特許を取得するだけで億万長者になれるとか、僕もこどもの頃にばくぜんとイメージしていた記憶があります。

 残念ながら、そんなに甘いものではないのですが、実際に特許で稼いでいる人は世の中にいらっしゃいますし、マネタイズ(お金を稼ぐこと)までの戦略をちゃんと練って特許を取得し、正しく使えばお金を稼ぐことができると思います。

 しかも特許は誰かが困っている問題を解決する発明に対して与えられる特別な権利なので、世の中に貢献しながらお金が得られてしまうという意味では素晴らしいですよね。

 ぜひ、そういったアイデアを思いついた方、あるいはすでにお持ちの方がいればチャレンジしていただくのも経験として良いかと思います。

 今日はアイデアの特許によるマネタイズ方法(お金の稼ぎ方)とそのポイントについて主婦のアイデア(フリーサイズの落としフタ)の特許を例にして説明しますね。

稼げる特許とはどんな特許なの?どうやって儲けるの?

 これは具体的なアイデア(発明)に対して、特許をとった場合にどのように稼げるのか、事例で説明するのが分かりやすいかと思います。

主婦の発明(フリーサイズの落としフタ)で稼いだ例

 これは有名な事例で鹿島よし子さんという方(当時は主婦だったそうです)が発明をして特許を取ったもので、↑の落としフタの写真は一般社団発明協会のサイトから引用させて頂いております。

 なお、ほんとうは実用新案というやつなのですが、実用新案と特許はほとんど同じですし、実用新案は聞きなれないと思うので、ここでは特許として説明しますね。

 どんな特許かというと、煮物とか作るときってナベに落としフタをして煮込みますよね。

 ただ台所にいくつかの大きさのナベがあったりすると、必要となる落としフタのサイズが変わるため、それぞれの大きさのナベごとに落としフタを持っておかないといけないじゃないですか。

 複数の落としフタをそろえるだけでもお金がかかるし、台所の場所が取られるし、主婦にとっては迷惑ですよね 😥 

 これが↑で書いた特許が解決する問題になります、世の中の主婦が困っている問題といっていいのではないでしょうか。

 そこで、鹿島よし子さんが当時、考えた発明が、フリーサイズの落としフタというやつです 😆 

 要するに落としフタのサイズを変えることができるもので、これさえ持っておけば色々なサイズのナベに対し、ちょうどいい大きさの落としフタとして使うことができるという優れものですね。

 たくさんの落としフタを台所に準備しておかなければならなかったことを考えると大変、便利になったと思いませんか?

主婦の発明(フリーサイズの落としフタ)の特許でどうやって稼ぐの?

 結論からいうと鹿島よし子さん(主婦)は自身が考えたアイデアで特許を取って、その特許を企業に代わりに使ってもらい、売上の一部を特許の許諾料としていただくというやり方でマネタイズしたといえます。

 めでたく「フリーサイズの落としフタ」の発明で特許をとれたとして、その特許を使ったお金の稼ぎ方は実は色々とあります。

 たとえば、特許を直接、使ってお金を稼ぐわけではないですが、鹿島よし子さんが自らその発明の内容の「フリーサイズの落としフタ」を開発、生産し、お店やネットショップなどで販売することで利益を得る方法がまず考えられます。

 このときライバル会社が同じものを開発や生産したくても鹿島よし子さんが特許を持っているため、開発や生産をすることはできず、鹿島よし子さんはその発明の「フリーサイズの落としフタ」を独占して生産、販売することができ、これによりお金を稼ぐことができます。

 しかし普通の主婦はモノづくりに関しては素人だと思いますので、一から開発、生産、販売するこのやり方は少々、難しいかと思います。

 そこで鹿島よし子さんは下村工業株式会社という新潟県の会社と契約をして、その下村工業株式会社にその「フリーサイズの落としフタ」を開発、生産してもらうというやり方を取ったそうです。

 「フリーサイズの落としフタ」は価格が900円でなんと累計で800万枚も売れたそうなので、ざくっといって70億円の売り上げですか^^

 鹿島よし子さんと下村工業株式会社との関係は分かりませんが、下村工業株式会社は売れる技術を見る目があったということですね。

 そして、鹿島よし子さんは下村工業株式会社から6000万円以上のお金(特許の許諾料)をもらったと言われています。

 自分のアイデアで世の中(特に主婦)に役に立って、しかもお金も得られるということで、こういう稼ぎ方は夢がありますよね。

特許で稼ぐって簡単なの?

 自らがその特許の製品(上記の例でいえば「フリーサイズの落としフタ」)を販売して、他社に使わせないようにするのが間接的ですが、最もシンプルな特許の稼ぎ方です。

 ただし、上記のように企業に対してその特許の使用許諾をして、その企業から使用許諾料をいただくというやり方は実は簡単ではないです。

 特に特許の素人さんがこの考え方で特許で稼ごうとしても難しいというかまず無理だと思います。

 なのでこのやり方でお金を稼ごうとした場合に特許を取るべきかどうかは、特に下記の二つのポイントを知ったうえで判断するのが良いでしょう。

そのアイデア(発明)を使いたい人がどれだけいるか、売上・利益の見込みは?

 これは非常に重要なポイントで上記の「フリーサイズの落としフタ」の例でいえば、800万枚も売れたということは、それだけ使いたい人が多かったということですよね。

 ここまで使いたい人が多い必要はないですが、結局、そのアイデアが使われた製品なりサービスでどれだけの売上・利益があげられそうか、見込みを立てることが大事です。

 売上・利益の見込みが立たないということは、その特許を取っても誰も使うことのない、つまり誰も特許の許諾料を払うことのない特許が手に入るだけで、当然、そのような特許を持っていてもお金を稼ぐことはできません

 なお、特許を取るための手続も複雑であり素人さんには難しいため弁理士に頼むのが一般的です。

 特許を取得するまでには安くても50万円はかかるので、安い投資ではありません。

 なのでどの程度の売上・利益が見込めるなら、特許を取った方が良いのかという判断は、なかなか難しいのですが、少なくとも300万円程度の利益(※売上ではないです)が見込めないと特許を取る意味はあまりないでしょうね。

特許の使用許諾の交渉は専門家(弁理士)に依頼しましょう!

 鹿島よし子さんと下村工業株式会社との交渉の経緯は知りませんが、実はこの特許の使用許諾の交渉はめちゃくちゃ難しいです。

 たとえばあなたがあるアプリのアイデアについて、「これは素晴らしい発明だし絶対に売れる!」と考え、ちゃんと弁理士に依頼して特許を取得したとしましょう。

 そのアプリの特許をアプリ開発をしている企業の担当者に「私の特許をぜひ使ってください!」と営業をしにいったとしますよね。

 そうするとその企業の担当者に何を言われるか、ですが、仮にその企業がその特許は素晴らしい内容だし、使ってみたいと思ったとしても、まあまず「いやあなたの特許はいりません。」といわれるでしょうね。

 先日、ユニクロのファーストリテイリングが下請け企業(大阪市IT関連企業のアスタリスク)からRFIDセルフレジの特許侵害で訴訟されているという記事を見ました。

 この記事の中でもアスタリスクの社長がRFIDセルフレジの特許について、ファーストリテイリングに説明した際、社長はファーストリテイリング担当者に「この特許は金を払うに値しない」と一蹴されたそうです。

 経験のない方はイメージが湧かないかもしれませんが、ほんと特許の交渉ってこういうものですよ。

 なぜかといえば、どこの会社だって払わなくて済むのであればお金は払いたくないですよね。

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特許訴訟の内容と経緯、実は下請け企業(アスタリスク)の勝ちにつながる知財戦略を企業内弁理士が読み解いていきます。

 このアスタリスクという下請け企業がファーストリテイリングとの特許の交渉を専門家(弁理士)に依頼していたかは分かりませんが、特許の交渉はその技術に詳しい必要がありますし、かつ高度なライセンス交渉技術が必要となるので、まず素人さんにはできません

 なので、技術に詳しく、かつライセンス交渉も経験されている弁理士(あるいは特許を専門とする弁護士)に依頼する必要があるのですね。

この記事のまとめ

1稼げる特許ってどんな特許なの?どうやって儲けるの?

1-1主婦の発明(フリーサイズの落としフタ)で稼いだ例

 鹿島よし子さんという主婦が発明をして特許(フリーサイズの落としフタ)を取ったものです。

1-2主婦の発明(フリーサイズの落としフタ)の特許でどうやって稼ぐの?

 鹿島よし子さんは自身が考えたアイデアで特許を取って、その特許を企業に代わりに使ってもらい、売上の一部を特許の許諾料としていただくというやり方でマネタイズした。

2特許で稼ぐって簡単なの?

 企業に対してその特許の使用許諾をして、その企業から使用許諾料をいただくというやり方は実は簡単ではない

2-1そのアイデア(発明)を使いたい人がどれだけいるか、売上・利益の見込みは?

 特許を取得するまでにも安くても50万円はかかるので、少なくとも300万円程度の利益(※売上ではないです)が見込めないと特許を取る意味はあまりない

2-2特許の使用許諾の交渉は専門家(弁理士)に依頼しましょう

 技術に詳しく、かつライセンス交渉も経験されている弁理士(あるいは特許を専門とする弁護士)に依頼する必要がある。

コメント

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