ギャンブル依存症を悪化させるパチンコ特許(特許庁さん、これ大丈夫?)

経済と知財
スポンサーリンク

ギャンブル依存症を悪化させるパチンコ特許(特許庁さん、これ大丈夫?)

 こんにちは、ベテラン企業内弁理士のタクパパです。

 今日はパチンコメーカ(株式会社藤商事)が取得しているパチンコ(遊技機)の特許で僕にとってはなかなか衝撃的な特許(特許3029562を見つけたので、これの紹介をしたいと思います。

 紹介というか、さすがにこういう特許を認めてはいけないのではないか?という特許庁への問題提起になりますかね。

 ちなみに特許3029562はさらに大手のパチンコメーカの株式会社平和の特許出願(特願2001-337870)の拒絶理由通知で引用された特許文献です。

 株式会社平和の特許出願(特願2001-337870)はこの特許3029562が理由として拒絶になっていますが、要は多数のパチンコメーカーが似たような観点で特許を取得しているということです。

日本のパチンコ産業の闇

 日本のパチンコ産業の売上は以前に比べるとだいぶん減ったもののそれでも年間19兆円もあるそうで、これだけで全世界のカジノ市場(年間18兆円)を上回るということで、桁外れに多いですね。

 つまりそれだけパチンコやパチスロにはまっている、いわゆるパチンコ依存症になっている人が日本には多いということです。

 僕自身ではないですが、僕の周りにもパチスロにはまって、多重債務になって消えてしまった人を何人か知っていることもありまして、この日本のパチンコ産業には思うところがあります。

 また、僕は学生時代にパチンコ屋さんでバイトをしていたことがあるのですが、そのお店の多くのお客さんはおじいちゃん、おばあちゃんでした。

 たちの悪いことに僕の働いていたお店もそうですが、大手パチンコ店は社会貢献の一貫と称してパチンコ店におじいちゃん、おばあちゃんを無料で招待したりしていましたね。

 これでおじいちゃん、おばあちゃんがパチンコで勝つと当然、気持ちが良いし、楽しいので、またやりたいと思ってしまうわけです。

 つまり、おじいちゃん、おばあちゃんにパチンコへの依存症を発症させるのがお店の本当の目的だったといってよいかと思います。

 これにより今度は無料でなくても、自分のお金でパチンコ店に通うことになるわけですね。

 ちなみに僕がバイトしていたお店は当時、パチンコ業界の最大手であったようで、バイトの給料がとてもよかったです。

 しかし、お店のお客さんのおじいちゃん、おばあちゃんはなけなしの年金をそこで使っている人が多く(というか大半)、首が回らなくなって破産した人も多いと聞きました。

 さすがに罪悪感を感じ、そのことを知ってから僕は即行でそのバイトを辞めました。

 言い方は悪いですが、パチンコ産業というのは、高齢者(おじいちゃんやおばあちゃん)などの社会的弱者を食い物にして成り立っているビジネスといって良いかと思います。

ギャンブル依存症を悪化させるパチンコ特許の内容(特許3029562

出典: 特許3029562

 この特許の明細書の【0004】から【0008】に【発明が解決しようとする課題】が記載されており、特に【0008】には↓のように記載されています。

【0008】このような場合には、ゲーム自体が非常に単調なものになり、多少の演出効果程度では遊技者のゲーム続行に対する意欲を維持又は喚起することができず、遊技者のゲームの断念を招来する欠点がある。本発明は、このような従来の課題に鑑み、遊技者にゲーム続行の意欲を喚起できる弾球遊技機を提供することを目的とする。

 これはどういう意味かというと、ちょっと極端に言いますと、

まだまだパチンコで遊んでいるお客さんは金を落とせるのに、そのお客さんがパチンコ台の演出に飽きてしまってパチンコを止めてしまうのが問題

 というのが【発明が解決しようとする課題】というわけです。
 マジか??と思ってしまうような内容ですよね。

 この課題を解決するための【課題を解決するための手段】が明細書の【0009】に記載され、「遊技者に有利な状態を暗示する暗示図柄を所定時間T 毎に短時間t だけ表示させる」となっています。

 これをもうちょっとくわしく説明したのが、明細書の【0036】、【0037】で、↓のように記載されています。

【0036】ゲーム開始後、・・所定時間T 経過する毎に、第2変動図柄表示手段29に暗示図柄、即ち「7・7・7」の大当たり図柄を0.04秒から0.08秒程度の極く短時間t だけ挿入して表示する。

【0037】・・ゲーム中、所定時間T 毎に第2変動図柄表示手段29に、遊技者が目視により識別できない程度の極く一瞬だけ暗示図柄を挿入して表示する。

 これ、言っている意味、分かりますでしょうか。

 要するにお客さんとしては単にパチンコで遊んでいるだけのつもりなのですが、お客さんが認識できないような短い時間(0.04秒から0.08秒程度)、「7・7・7」のような大当たり図柄が実はパチンコ台に表示されていて、お客さんが気づかないうちに(潜在的に)認識されるようになっているというわけです。

 そして、この特許発明による効果が、同じく明細書の【0037】に↓のように記載されています。

従って、遊技者は、ゲームの開始後に所定時間T が経過する毎に、その暗示図柄によって潜在意識が刺激されることになり、そのサブリミナル効果によって大当たり発生に対する期待感を抱きながら、面白くゲームを続けることができる。つまり、所定時間T 毎に遊技者にゲーム続行の意欲を喚起することができる。

 このサブリミナル効果というのは、知覚刺激が非常に短時間であるなどの理由で意識としては認識できないが、潜在意識に対して一定の影響を及ぼすことができるという心理学の効果のことをいいます。

 つまり、今回の特許の例でいえば、お客さん(遊技者)が意識できないくらいの短い時間に(0.04秒から0.08秒程度)、「7・7・7」のような大当たり図柄をパッ、パッと表示することで、お客さん(遊技者)は「もしかして大当たりがくるのでは?」と潜在意識で感じてしまい、パチンコを続けるはめになるというのがサブリミナル効果です。

 言い方を変えると、お客さんを洗脳することで、パチンコを続けさせ、お客さんにお金を落としてもらい、パチンコ店が儲かるようにするという特許だと言って良いかと思います。

 もちろん特許には記載されていないですが、お客さんを洗脳してパチンコを続けさせるということは、これはパチンコへの依存症を発症させることに繋がると言って良いのではないでしょうか。

ギャンブル依存症を悪化させるパチンコ特許は公序良俗違反(特許法第 32 条)に該当しない?

 特許法第32条は、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生(公序良俗等)を害するような発明について、特許を受けることができないことを規定しています。

 特許庁のガイドラインによれば、「特許法第32条は、公益的な理由から不特許事由について規定したもので、 公序良俗等を害するといえるか否かは、国家社会の一般的利益や道徳観、倫理観に関わる」と説明されています。

 ここで、僕の主張の通り、特許3029562「お客さんを洗脳することで、パチンコを続けさせ、お客さんにお金を落としてもらい、パチンコ店が儲かるようにするという特許」だとしたら、これって道徳的、あるいは倫理的にまずいと僕は思うのですが、いかがでしょうか。

 しかも結果的にパチンコへの依存症を発症してしまい、パチンコにはまることで借金まみれになり、そのお客さんが破産したり、最悪、自殺したりする(※実際にこういう事件はとても多いようです・・)としたらどうでしょうか。

 こういったことを考えると、特許3029562のような発明は公序良俗等を害するといえるのではないか、と僕は思うわけです。

 ちなみにJ-PlatPatの検索キーワードとして「発明・考案の名称/タイトル」に「遊技機」、「全文」に「サブリミナル」として検索すると、このパチンコ業界の特許出願で130件がヒットして、そこそこ特許になっているようです。

 つまり特許庁としては、「お客さんを洗脳することで、パチンコを続けさせ、お客さんにお金を落としてもらい、パチンコ店が儲かるようにするという特許」については、公序良俗違反(特許法第 32 条)には該当しないと考えているということです。

 さすがにこれはまずいでしょ、と僕は考えますが、僕の感覚がおかしいのでしょうか。。。

サブリミナル効果について

 サブリミナル効果ですが、1957年に米国の広告業者が雑誌に掲載した実験で広まったものです。

 実験というのは、「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」という文字メッセージを1/3000秒ずつ5分ごとに繰り返し、差し挟んだ映画を放映した映画館で、コーラとポップコーンの売り上げが急増したというものです。

 しかし、再現実験では実証されず、後になって虚構であったことが知れたため、心理学の分野では、このサブリミナル効果を認めないとする学説も多いようです。

 ただし、たとえばカナダにおいて、サブリミナル広告は、”公の利益に反する”とされ、”人を欺こうとしている”という理由で禁止となっているようですね。

本記事のまとめ(ギャンブル依存症を悪化させるパチンコ特許)

 以上、ギャンブル依存症を悪化させるパチンコ特許について、公序良俗違反(特許法第 32 条)に該当するため特許にすべきではないという説明を僕なりの考えでしました。

 他の業界でもこういった議論が実はあるのかもしれませんね。

 これに関しては色々とご意見があると思うので、ぜひ他の方の意見も聞いてみたいものです。

 最後までお読みいただきありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました